一番 眩しいもの

  • 2018.11.04

一番 眩しいもの

 

どんなに気持ちを尽くしても
事前に何回 伝えても
毎日、何度も繰り返す
こだわりの強さや
切り替えの苦手さによる癇癪や、誤解。
その時の、私の声など
次男の耳には届かない。
もしかしたら
このまま、彼には届かないのかな。
前から何度も言ってるよ。
「ツトムが◯を好きなことは素敵だよ。
だけど、□□があるから
△時になったらいったん終わりにしようね。」
「また出来るから。
それは、どこかへ逃げたりしないから。
いつまでも大切にしていて良いからね。」
何度も何度も、伝えているよ。
それなのに
どうしてそんなに大きな声で、泣きわめくの。
「何回でも諦めずに伝えていこう」と決めたのに
どうしても
そんな気持ちを保てなかった。
泣きわめくツトムに
責められているような気がした。
そんなツトムの瞳にたまらなくなって
ツトムを、叩いてしまった。
時間とか
周りの目とか
親の言うこととか
そんなの気にせずに
やりたいことをしたい!と思っていた頃が
きっと私にだって あったのに。
でも、私は結局
母を困らせたくなかったし
周囲と「異なるもの」になるのが不安で
「そうなるかもしれない」と思うと
勇気も出せずに
自分のやりたいことを、通し切れなかった。
それは私の問題なのに。
好きなことが出来るように
たくさん自分のお母さんに
考えてもらって
心配してもらって思ってもらえて
「良いなぁ…」なんて。
どこかで子どもを「羨ましい」と思っている
自分が居ることに気が付く。
どうしてあなたたちは
そんなに
自分に素直で居られるんですか?
どうしてあなたたちは
こんなに親を困らせても
好きなことを、通そうと思えるんですか?
「大声で泣ける」ということ
それさえ私は、あなたたちを羨ましくなる。
ねえ私は
何回も何十回も、きっともう何百回も
あなたに伝えているんだよ。
あなたの好きなことを守るために
□□を、ちゃんとやろうって。
こんなに考えて、あなたに伝えているのに
そんな目で見られると
私の方が、まるで
おかしな事を
言っているんじゃないかって気持ちになるよ。
このまま永遠に
私の思いなど伝わらないのかもしれないって、途方に暮れるよ。
泣きわめくあなたを前に
開けて貰えるかも分からないタイムカプセルを作り続けるのは
私には、なかなか難しいよ。
もっと、強くて優しくて穏やかなお母さんに
なれれば良かったのに…。
そんなグチャグチャな思いに飲み込まれそうになって
ツトムのそばに居られずに
洗濯機の横で、座って泣いていたら
メガネを作り直してきた長男が帰ってきて
「ただいま」の後に
「どうしたの?」と声をかけてきた。
私が「お帰り」も上手く言えなかったというのに
家の様子を見渡した長男は
たった一言だけ言った。

 

長男は、声変わりもまだで

 

「女の子」と言っても通るくらいの
優しい声を持っている。

 

心を取り戻せるような安心する声で

一言だけ、そう言ってくれた。

そっか 私も
ツトムにそんな一言を、渡してあげられたら良かったのになぁ。

大きくなったね ハルは。

 

体もだけど、心も。
ADHDだなんて、単語も知らなかった
ツトムと同じ1年生の頃は
多動や不注意や忘れ物で
よく先生から、家にも電話が来ていたのに。
そんな長男に
今は私の方が労ってもらうこともあるだなんて
あの頃からは、想像もつかない。
ハルがこんな風に大きくなってくれたから
特性は異なっても
ツトムに対して
育てていく希望を、完全には失わずに
私は 生きていっているのかもしれない。
ハルに教わることが
私には、たくさんあるんだよ。
もちろんツトムにも。
ケイにもあるんだよ。
あなたたち子どもは、生きているだけで
色々なことを 私に教えてくれているよ。
忘れものまで、届けてもらっているよ。
そのうち、夫も帰ってきたので
週に一度しかない「皆でご飯を食べる日」を
いそいで私は用意して
もう笑顔に戻ったツトムも一緒に
皆で「いただきます」をした。
キッチンのカウンター越しに見える
当たり前のような、このなんでもない風景

あとがき

 

家族に困らされることは、たくさん。
困らせてしまうことも、きっとたくさん。
でも 私は、家族が眩しいです。
何年経っても このなんでもない風景が
私にとっては、一番まぶしいです。
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